ほんのひとさじ

日々の雑記

グレープフルーツ

10歳頃だったと思う。
種を植えて芽が出る様子を見るのが楽しかった。
それぞれの種から出る芽はそれぞれ違っていた。

家の近くの雑木林でどんぐりを拾ってきて、家にある植木鉢に土をいれて種を埋めた。
いくつかは大きくなり、幹は細いが50cm以上の高さになった。
それらはもとの雑木林に植えた。(本当はいけないと思う)

どんぐりのほか、かんきつ類の種も植えた。
ひときわよく育った木を、家の前の公園に植えた。(これも本当はいけないと思う)
これがグレープフルーツだった。

グレープフルーツの木は何年も全く実をつけなかった。
実をつけたのは、植えてから10年以上経ったときのこと。
食べてみたが、ひどく苦くて食べられたものではなかった。
何年かすると、たくさんの実をつけるようになった。
実をもいでしばらく置いておくと、苦さはあるものの、食べることができた。
そのうち、収穫が毎年の楽しみとなった。
「夏みかんだったんじゃないの」と言われるほど、味もまろやかになった。

昨年、そのグレープフルーツの木があった公園は閉鎖された。
遊ぶ子どもがほとんどおらず、草が生えていた。そもそも近所に子どもがあまりいないのだ。
公園のあった土地は市から地主さんへ返還された。
造成され宅地として販売されることになった。
グレープフルーツの木はほかの木とともに切られてしまった。

どんぐりの木を植えた場所はすっかり忘れてしまった。
今も雑木林はあるので、どこかで実をつけているかもしれない。

いま、マンションのベランダへ置いた鉢に文旦の種を植えて育てている。
地面に植えることができず、鉢植えなので実をつけるには地植えよりずっと多くかかるだろう。
それでも、土の状態が悪くなければそのうち実をつける可能性がある。
10年以上かかっても、小さな実だとしても、その日を楽しみに育てたいと思っている。